Interview index online

04. March 2015 · http://www.njp.or.jp/archives/17822

Für den Frieden

Das Projekt War & Peace und das Sumida Memorial Peace Concert in Tokyo aus Anlass des 70. Jahrestages der Zerstörung Tokyos

ヘンヒェン、モーツァルトについて語る。
3/10 すみだ平和祈念コンサート(トリフォニーホール主催)、3/15 #537定期演奏会<サントリーホール・シリーズ>では、ドレスデン出身の大御所マエストロ、ハルトムート・ヘンヒェンが登場します。
日本のオーケストラとも度々共演していますが、新日本フィルとは初共演。
どんなサウンドを聴かせてくれるのでしょうか。

マエストロ・ヘンヒェンはモーツァルトを深く敬愛していると聞き、今回の2公演についてインタビューを行いました。

―#537<サントリーホール・シリーズ>では、モーツァルトの交響曲第39番から第41番を同時に演奏します。
この3曲を一挙に聴く聴きどころを教えてください。

Mo:私にとってこの3つの交響曲とレクイエムは密接なつながりを持っています。
作曲された時期がとても近くて、3つの交響曲は半年ぐらいの間に立て続けに書かれています。
今回の演奏順でもありますが、変ホ長調、ト短調、 ハ長調の順番で作曲しています。
私にとっては、これらの作品には多くの関連性があるのです。一つには主題、3曲全てに登場する主題がありますし、またチクルス的な構造も見られます。
もっともモーツァルトは一度もこの3曲をチクルスとして演奏してほしいとは言っていないのですが。

交響的構造として、変ホ長調(39番)はとても柔らかい愛情豊かな作品で、他のどの交響曲にもない響きの特徴があります。それは、他の作品ではいつも使っていたオーボエの代わりにクラリネットを使っているからです。
それからト短調(40番)では、オーボエとクラリネット両方が入っている2番目の版を使い、それが編成の大きい「ジュピター」へ移行する作品となります。ジュピターは、締めくくりにふさわしい、輝かしい作品です。それに対して、真ん中のト短調は勇ましい、ほとんどロマン派と言っても良い作品です。
このように私にとってこの3曲はチクルスとして演奏できる作品なのです。

 

―3/10 すみだ平和祈念コンサートで取り上げるモーツァルトの『レクイエム』について、お聞かせください。

Mo:もちろんモーツァルトのレクイエムは大変よく知られた作品です。著名な作品には、本当に深いところまで耳をかたむけなくなる、という危険性が時折あります。
モーツァルトは当時、最後の交響曲数曲のときと同様、極めて困難な生活を送っていました。それでも彼が書いた音楽は単に悲しいだけのものではありません。
レクイエムにおいても、深い悲しみを表現しましたが、常に希望を、この作品の場合はキリスト教の作品なので、信仰を通じて、もっと良い人生が可能だという希望を表しています。
このレクイエムは実際のところ、生きている人に対する呼びかけであり、死者のための音楽ではないのです。
モーツァルトは悲しみを通じて人間の浄化を望んでいます。人間が手にしているその“生”を通じて、なるべく多くの善き事を成し遂げるように、平和のために寄与するように願っています。

―今回の公演では、ご自身の研究による「ヘンヒェン版」を演奏される予定ですね。

Mo:モーツァルトはレクイエムを完成していません。複数のヴァージョンがありますが、私は様々な理由から、そのいずれもモーツァルトの意思に添ったものではないと考えています。ですので、私自身のモーツァルトとの経験から、もしかするとよりモーツァルトに近いのでは、と考える版を作成しようと考えました。もちろん私はモーツァルトではありませんが、モーツァルトを理解しようと試みています。


―すみだ平和祈念コンサートは、70年前の東京大空襲の犠牲者への追悼と、平和への祈りを込めた演奏会です。
ヘンヒェンさんが生まれたドレスデンも同じ年に空襲の被害を受けています。
どんな思いでこのコンサートに臨まれるのでしょうか。
Mo:私が育ったのは完全に破壊された町(※ドレスデン)でした。
幼い子供の時に、空襲によって引き起こされた火災の激しさを体験したのです。
私は戦争と破壊が何を意味するか理解しています。ですので、ちょうど今、戦争と平和に関するプロジェクトに取り組んでおり、それはヨーロッパの各首都、そして東京、すみだを含むものです。
音楽を通じて、人々の記憶を呼び覚まし、平和なところではその平和を守るために、平和がないところでは平和が訪れるためにたたかってほしいと考えています。
これは私にとって、音楽における重要なこだわりで、そのためにこのプロジェクトに取り組んでいるのです。

―マエストロは日本にも何度もいらしているそうですが、日本の印象についてどのように感じていますか。

日本での滞在日数を合算したことはないのですが、おそらくトータルで2年か3年ぐらい日本に滞在したことになると思いますよ。初来日は1974年でした。それ以来、だいたい年に1回ぐらい来日しています。
ヨーロッパのオーケストラとの公演が多いけれど、日本のオーケストラともたくさん共演しています。
日本に関してはかなり良く知っていると思います。沖縄から北海道まで、訪れていますから。
日本のほとんどのコンサートホールを知っているし、もちろん日本の聴衆も良く知っています。
私の知る限り日本の聴衆は、もっとも規律正しく、もっとも集中している聴衆です。
そしてまた私の人生において、もっともたくさんの質問をしてくるのも日本の皆さんです。終演後に何人ものお客様が待っていて、スコアを片手に「なぜここはこういう風に演奏したのか」「他の指揮者はこうするのに、貴方はなぜこうするのか」などと質問してきます。それは、皆さんがヨーロッパの音楽をとても良く理解しているということであり、ヨーロッパでいつでも体験できることではありません。
ですから日本での演奏は大きな喜びであり、毎回楽しみにしているのです。

―日本の聴衆へのメッセージをお願いします。

今回の特別の機会にすみだでのコンサートを指揮できることを光栄に思います。私が生まれ育った町も同じように破壊された歴史を持っています。翌週のシンフォニー(サントリーホール・シリーズ)もありますが、まずは、すみだのコンサートにいらっしゃるお客様を、心よりお待ちしております。